それでも生きていく

「何しに来たの?」
「そんな雑用でお金もらえるなんてラッキーだね」
「無能なんだから言われたことをちゃんとしろよ」
「どうせ、何もできないもんね」
「こんな暗い部屋に女がいたら、襲ってくれってことだろ?」
今日も聞こえるあいつの声を音楽で押し流して、今日もきちんとした格好で職場に向かう。

「何がしたいの?何もないの?」
「つまんない人間になったね」
今日も囁くあの人の声を音楽で押し流して、今日も笑って人と会う。

「お姫さま扱いしてあげれば満足?」
「俺がこんなに合わせあげているのに」
「自分のことを好きになれないやつに、誰かを愛することなんてできないだろ」
まだ甦るあの声を音楽が押し流して、私は今も誰かを求める。

役に立たない私は不要でしょうか。
生きる目的や夢がない私はつまらないでしょうか。
あなたを愛せなかった私は欠陥品でしょうか。
私を愛せない私は誰とも愛し合えないのでしょうか。

それでも生きていたい私は、わがままでしょうか。

起きたくない朝を迎えたら、
一日を乗り越えたら、
泣きながらでも生きていたら、
少しずつでも前に進めていたら、
いつか貴方に繋がると、信じていてもいいですか。
いつか「逢えてよかった」と言える貴方に。

貴方は私かもしれない。
貴方はまだ見ぬ貴方かもしれない。
貴方はこれから生まれるのかもしれない。
貴方は人ではない何かなのかもしれない。

貴方にとっての唯一になれるなら、世界に嫌われても生きていける。
その日を夢見て、生きている。